夏の朝の土手沿いは、ゆっくり走ると景色の見え方が少し変わる。 隅田川の光や草の影が、いつもよりゆっくりと動いて見える。

走り始めは、ただ明るいだけの土手だ。 川の反射は強くて、草の匂いが少し濃い。 橋から橋へ続く周回コースも、いつもと同じ距離に見える。
隅田川のこの周回は、右回りと左回りを一周ずつ。 道に少し傾斜があるから、左右のバランスが偏らないようにしている。 意味があるのかは分からないけれど、なんとなく続けている習慣だ。
ゆっくり走り始めると、景色の速度が変わる。
草の影がゆっくり伸びていく。 川面の反射が細かく揺れて、光が柔らかく見える。 遠くの雲が、ゆっくりと形を変えていく。 土手の斜面の色が、朝の光で少しずつ濃くなったり薄くなったりする。
周回コースでは、向こう岸にもランナーが見える。 右回りと左回りをしているので、しだいに同じ人とすれ違うようになる。 人が多い日は、つられてペースが少し上がってしまうこともある。 そんなときは「まだまだだな」と思うけれど、 すれ違う人たちも、それぞれのペースで朝を走っている。
最初のころは、この周回もきつかった。 夏の真昼間の土手は本当に暑くて、走るだけで精一杯だった。 でも、夏の朝は少し涼しくて、走りやすい。 走り始めてから気づいたことだ。 学生のころ、部活で走らされていたときには感じなかった静けさ。
荒川のコースを走る日は、岩淵水門を通る10kmの周回。 隅田川とはまた違う広さがあって、景色の流れ方も変わる。

最近はアキレス腱の痛みが気になったり、気にならなかったりするので、 その日の様子で走り方を変えている。
基本はゆっくり、心拍120〜130。 調子が良い日はビルド走をしたり、 たまにテンポ走で150付近まで上げてみたりする。 夏の朝の土手は、どんな走り方でも景色が受け止めてくれる。
走り終わったあとも、景色の余韻が残る。 シャワーのあとに光を思い出したり、 帰り道の空が少し白く見えたりする。

体に残る“朝の温度”が、ゆっくりと落ち着いていく。
夏の朝の土手沿いは、ゆっくり走ると景色が変わる。 ただそれだけのことが、静かに気持ちを整えてくれる。


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